院長紹介

院長 名執 亮太 〔Ryota Natori D.D.S.〕

  • H.4筑波大学附属高校卒業
  • H.10 東京歯科大学卒業
  • H.10~14東京医科歯科大学病院研修医課程修了
    摂食機能保存学(第2補綴科)医員
    インプラント科専攻生
  • H.14~15 ノースカロライナ大学
    骨再生・分子生物学研究室1年間留学
    L.Cooper先生の下、骨再生の遺伝子研究に従事するとともに、臨床ではアストラインプラントについて研修する。
  • H.15~17 UCLA審美歯科センター 2年間留学
    研修医課程修了
    各国のDrの中から研修医コース3名に選抜され、審美歯科医として世界で屈指のEd.McLaren先生の直接指導の下、多数の患者の治療を行う。
  • H17~H19 都内開業医勤務
  • H20 名執デンタルオフィス 開設

院長インタビュー 「アメリカの歯科医療から学んだこと」

-院長は留学をされていたそうですね?

私は日本の大学病院に4年間在籍したのち3年間アメリカに留学をしました。1年目はノースカロライナ州にあるノースカロライナ大学で研究員として、2年目と3年目はロサンゼルスにあるUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で審美歯科センターの研修医をしていました。

-ノースカロライナ大学での研究員というのは?

ノースカロライナ大学では補綴学(被せ物や義歯など)の准教授をされていたDr.Cooper(クーパー)の研究室に所属していました。Dr.Cooperは臨床では補綴がご専門の先生ですが、実際はむしろ研究に非常に重点を置かれていて、分子生物学、特に遺伝子での「骨の再生」をテーマに活発に論文発表していらっしゃる先生でした。

-歯科なのに骨の研究ですか?

はい、インプラント治療は顎の骨にインプラント体を埋入する手術を伴う治療ですが、実際は治療にあたり顎の骨の量や高さが喪失していたり、不足している場合がほとんどです。

そのために様々な材料、手法で骨を足したり増やしたりする手術を併用してインプラントの手術を行っていくわけですが、必ずしも想定していた通りに骨の量などをコントロールできるわけではなく、「骨の再生」というのは大変重要な課題です。
ですからDrCooperの研究も注目されており、当院でも使用している世界的な主要インプラントメーカーのアストラインプラントの主任研究もされていました。

-ノースカロライナ大学での1年間を振り返ってみるとどうでしたか?

私は留学する前年まで東京医科歯科大学のインプラント学講座に在籍しておりましたので、米国に渡ってからの1年間も引き続きインプラント治療の臨床見学しながらアドバイスを頂いたり、骨をテーマにした研究にご指導頂きながら携わることができたのは、現在の当院で行っているインプラント治療に繋がる非常に貴重な経験でした。

審美歯科とは満点にはならないものの、
いかに100点に近づけていくか

-その後、留学の場所を移られたそうですね?

2年目、3年目はロサンゼルスにあるUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の審美歯科センターで2年間のプログラムの研修医になりました。ノースカロライナ大学で見学をしていた時とは違い実際に患者様の治療を行うので、プレッシャーはかなりありました。

当時のUCLA審美歯科センターでディレクターを努めていたDr.McLaren(マクラーレン)は世界で最も著名な審美歯科医の1人です。その先生の下で、私は審美歯科を丸2年に渡ってイチから学ぶ事ができましたが、この経験ができるのは世界でもほんの一握りで、今日の自分の歯科治療の礎となっています。

-UCLA審美歯科センターでは実際にはどのような研修をされましたか?

私は2003年クラスでしたが、実際に患者様の治療を続けながら講義、実習が2年間続きます。テーマは一貫して「審美歯科」に徹底しているため、その間一度も根の治療や歯周病など、その他の歯科治療をすることはありませんでした。また、審美歯科の世界では歯に金属を入れることもなく、セラミックなどを用いた“自然の歯と見分けのつかない治療”だけが行われるという世界でした。

入学してまず最初に行うのは1週間みっちりと行うデッサンの授業です。本当に美術の先生が行うデッサンの授業で、似顔絵を描いたり、基本的な光と影の使い方を学んだり。時には見ている絵を逆さまに書いたりもしました。(笑) 

当初私は正直言って「ここまでやるの?」と驚きましたが、「審美はアートなんだ!右脳を鍛えろ!!」と言われて納得して、それからはのめり込むように審美歯科の世界へ入っていきました。

-クラスはどのような感じでしたか?

私たちのクラスは、世界各国から留学に来ている歯科医師が3人とセラミスト(セラミック専門の技工士)が10人おりました。歯科医師と技工士が同じクラスになるのがUCLAの審美歯科プログラムの大きな特色で、これは他には無いと思います。国籍も職種も異なる研修生が一つの同じ授業、実習を受けながら知識を共有しあって学びを深めていきました。

実際に患者様の治療にあたるときには、我々歯科医1名に対し、セラミスト3名のチーム編成がなされます。このセラミストチームは、3名それぞれがセラミックの被せ物を作製し、最終的にコンペティションをして最も優れた1つが選ばれ実際に患者様の歯に装着されることになります。

当然私は歯科医師として、この同期のセラミストたちとうまく連携しなければなりません。そこで、実際に彼らがセラミックを製作する際にどのようなことを考えていて、どのようなことを歯科医師に望んでいるのかについて、治療の度にかなりの時間をかけてディスカッションをしました。この経験は大変貴重な財産で、いま私が歯科治療の“美しさ”という視点をセラミックの製作側から考えることができるのも、当時の経験が大きく影響しています。

-Dr.McLarenはどのような先生でしたか?

Dr.McLarenはアメリカの著名な審美歯科医ですが、実はセラミストとしても世界中の学会で講義を行うほど大変有名です。彼は歯科医師として歯を削り、そしてセラミストとしてセラミックを焼いて被せ物を入れるまで一人で行います。そんな彼だからこそ歯科医師とセラミストの両方の研修生を教えることができるんですね。

アメリカの審美歯科といえば「とにかく白い歯」というイメージがありましたし、実際に「審美=白ければ良い」と考えているアメリカの歯科医師も多いと感じました。しかし、Dr.McLarenはアメリカの審美歯科医ではありますが、セラミストとしてはヨーロッパで教育を受けてきた経験があり、彼の作り出す被せ物にもその影響は強く現れていました。つまり「審美歯科=白」ではなく、「天然の歯にいかに近づけるのか」、「どうすればセラミックが自然と調和するのか」ということを突き詰めていらっしゃいました。

「これだ!」という答えを見つけたように感じました

-ご自身には影響はありましたか?

はい、私自身ももともと日本で「ただ真っ白い歯は本当に審美なのか?」と疑問に思っていました。ですからDr.McLarenの製作した被せ物を見た時に、人工物であるセラミックが口の中でごく自然に美しく、そして機能的に共存していて、彼の目指している「審美歯科」にとても強く共感をしました。自分の中ので「これだ!」という答えを見つけたように感じました。ですから私は「とにかく白くすれば良い」という考えには全く同意できません。

人工物を自然に調和させるのは本来とても難しいことです。やはりUCLAでの経験や、Dr.McLarenの影響で今でも被せ物を製作する際に、「いかに自然に見えるか」というテーマで技工士と何度も打ち合わせをします。当院の歯科治療にはすべて“自然に美しく仕上げる”というテーマがあります。患者様のご希望と私たちがご提供できる限りの専門技術を持って、治療を終えた時、それまで以上に輝きを持って過ごせるようサポートをしたいと考えております。

-アメリカと日本の歯科医療の「違い」はありましたか?

皆様ご存知のように、日本には「保険治療」という制度があります。この保険治療は患者様にとって費用的な負担を軽減していますが、反面、歯科医師は様々な制約がある中で治療していることも多いです。

このような背景から日本の歯科治療において、我々歯科医師が無意識に保険治療の制約を前提として治療を計画しがちになっているように感じますし、保険治療がもたらすメリット・デメリットについて、患者様もあまり興味を持っていないというようにも感じます。その結果として患者様がもしかしたら高品質な治療を受ける機会を得にくくなっているかもしれません。

アメリカには日本のような保険制度は存在しません。つまり制約があるわけではないので、歯科医師の考え方が大きく反映されます。審美歯科の専門医ということになれば、審美歯科の視点において「どのようにしたら最善か」「一番美しく口もとを魅せられるか」というテーマで治療方針を考えます。

例えば、前歯の見た目について相談にいらした患者様がいたとします。このとき、日本では「現状のお口の中でどうするべきか」というご提案することが多いと思います。つまり、保険制度の制約の中で現在のお口の状態に限定しての話をされがちかと思います。もちろんそうでないケースもありますが。

一方アメリカでは、「うん、隣の歯が少しズレてるから、まず矯正しよう」と、このような提案を行います。つまり、根本的に現状ごと変えてしまう提案です。なぜなら“そうした方が綺麗な歯が作れるから”です。

-実際の治療面でも違いはありましたか?

治療の進め方そのものにも違いがありました。
被せ物などは通常は歯を削って、型取りをして、技工士が被せ物の製作をし、次のアポイント時に装着するという流れが一般的です。審美治療の場合はさらに色を合わせる必要があるため、写真撮影やセット時の色の確認など工程が多くなります。

日本でも審美歯科に力を入れている医院では、より詳しく色の情報を得るために技工士自身が立ち合いの上、写真撮影やスケッチを行ったり、被せ物のセット時にも技工士が立ち会い修正点を見つけだしたりはしています。

UCLAでのDr.McLarenの場合、治療と型取りまで終わった患者様を次回のアポイントでは診療室ではなく、同じ病院内の自分の技工室に案内し、自分の作業机の横に座らせます。

そして製作途中の被せ物を実際の患者様の歯の色を見ながらその場で焼き上げていきます。セラミックの被せ物は、何層にも陶材を重ねて焼いた陶器ですが、一番内側の層から焼き上げて、隣に座らせた患者様のお口の中で色や形をチェックしていきます。間違いがあれば修正して、次の層の陶材を盛り上げて焼きます。

一つの焼き上げ工程に30分~45分程度かかりますが、その間患者様は近くのカフェテリアなどで時間を過ごし、再び色などをチェックした後、焼き上げ工程の間また外出します。当日の拘束時間は約3~4時間にもなります。

「審美歯科に取り組む姿勢」を感じたことが最大の成果

-患者様も大変ですね。(笑) 日本とアメリカでは考え方が違うということでしょうか?

日本ではとても考えられない方法ですが、アメリカでは患者様も治療により高い完成度を求めているので協力的でもあり、専門的に審美歯科を行う医院ではごく当たり前に行われている光景でした。

これほどの手間や時間をかけて精巧に調整された被せ物は、本当に見事に患者様の歯の色と合います。私も何度も目にしてきましたが見事な出来栄えでした。「それだけやれば当たり前だ!」って感じですが、むしろ治療方針にしろ、被せ物の作り方にしろ、「それが良い事だから当然やる。できる限りの事をやりきる」という非常にシンプルな考え方だと思いますし、彼らからしてみたら「良い事とわかっているのになぜやらない?」と疑問に思うでしょうね。

審美歯科というのは「人工物をいかに自然に調和させ美しくみせるか」という分野です。ですから逆に言えば人工物である以上、100点満点は有り得ないということです。本物の歯ではありませんから。

つまり審美歯科とは満点にはならないものの、いかに100点に近づけていくか、ということに歯科医師と製作する歯科技工士の知識や技術を全て結集して追求することと思っています。

UCLAでの経験で得た、審美歯科が美術であるという考え、そして人工物によって生まれる自然な美しさを知識や技術を知り得たこともそうですが、何よりその「審美歯科に取り組む姿勢」を感じたことが最大の成果ではないかと思っています。

世界最高水準の審美歯科を経験してきたからこそ分かる
一つ上の完成度

-留学経験を活かして今後はどのような治療を目指そうとお考えですか?

私は世界でも極められた審美歯科の世界を経験してきました。そこで経験した真の意味で「やりきる」ということは、今でも繰り返し自問するテーマです。

どれもが明確な正解の無い世界です。だからこそ、この「審美歯科」の世界でどこまで追求するのか、終わりがないからこそ、毎回全ての状況で「やりきる」ということが、本当の審美歯科への道だと私は信じています。世界最高水準の審美歯科を経験してきたからこそ分かる、一つ上の完成度をもっともっと多くの方に体験していただきたいと思います。

当院ではこれからも日々の研鑽と向上の心を持って、更に高品質な歯科医療を提供できるよう努めてまいります。